今、この世は大きく三つに分かれている。
人間が住む地上の他に、天界、魔界が存在する。
遥か昔、美しき地上には三つの種族、即ち人間、魔族、そして世界を生み出したとされる天人が共存していた。
しかし天人は、人間と魔族の血が交わることにより自分達を脅かす程の力を持つ者が現れるのを恐れ、
魔族だけを地下深くに閉じ込めた。
そしてまた、自らも空高くに生存圏を遷した。
こうして三種族は分かれ、世界の均衡は保たれたかに思われた。
しかし、綻びは微かに生じ始めていた。
─魔界に一つの産声が響いた。
魔族が地に堕とされる前、一人の魔族が人間との子を身篭っていたのだ。
人間と魔族の血を引く稚児は、魔族として平凡に育った。
成年になった彼は、健康診断の結果にて己の血の真実を知る。
「天人の愚挙が許せぬ…」
幾千年に渡り、力を蓄え、魔王となった彼は、
世界の全てを美しき魔界に変える為、
今日も侵略し続ける。